手法の話なのだけど、
推拿の施術をしていると、
人生の縮図と言うか、
哲学だなあ、
と思うことが度々ある。
ぼくは推拿の道に入ってから、
20年経つので、
知らぬ間にベテランと言っても良い領域に入ったと、
勝手ながら思っている。
経験の浅い方に、
指導させて戴いて思うことは、
施術の中に『静』の時期を創ることは、
かなり難易度の高いことなのかな?
と言う事だ。
推拿を習う、
推拿を教える、
となると、
基本の手技、手法を習う、教える、
と言う事にたいていはなる。
初めて習う側からしても、
推拿らしい?
動きのあるものを早く習いたいと思うかも知れない。
今思いつくところで言うと、
こん法(※こんは手偏に袞)や、
掌按揉法(しょうあんじゅうほう)などは、
動きが派手で、
技術としても簡単ではないので、
教える側としても教え甲斐があると思う。
しかし、
日本人のぼくが思うに、
この表面的な動きを教えるのは、
ある意味簡単なのだが、
本当に伝えなければならないのは、
動きの中には見えない『静』の理解だと思っている。
実際、
ぼくが、
一般的に公開されている講習会で、
この『静』の部分に、
深く言及した講義はない。
「情報」と言うだけあって、
これらの本質的な大切なことは、
そう易々と表に流れることはない。
あるいは、
伝える側が伝えていたとしても、
それを受け取る側に「器」が出来ていないと、
耳から聴こえていても、
肚の底に受けとることが出来ないのが事実だ。
推拿の手法の中に重要な『按』があるが、
この『按』の理解が重要だ、
と言う事を伝えるのは簡単ではないし、
受け取る側にその認識が備わる事も同じだ。
今日、
初めての患者さんで、
50代の男性がいらっしゃった。
主訴は、
肩甲骨の下から骨盤の上にかけて、
疲労が蓄積すると、
筋張ったところがビキッと吊る、
と言う感覚で痛むと言うものだった。
右肩は五十肩がピークを越えた時期、
ぎっくり腰にも時々なるとのこと、
日頃、書類を抱えての外回りと、
パソコンに噛り付くような内勤で、
2人分は働いているブラックハードワーカーだと自称しておられた。
主訴の背中の面もそうだったが、
右首から肩周囲、肩甲骨周囲、肩関節周囲の、
凝り、詰まり感が半端ではなく、
まさに満身創痍と言う50歳だ。
ツボで言うと「肩井(けんせい)」という、
所謂肩もみ、肩叩きで触れる肩の部分、
この厚い凝りを柔軟にするのは、
押したり揉んだりするのでは、
つまり、
動きのある手法だけで柔軟にするのは、
なかなか困難だ。
ましてや、
時間料金の制約がある。
そこで、
よく使われる推拿の手法に『拿法(なほう)』がある。
推拿の「拿」だ、
推拿の「推」は文字通り「推す」、
「拿」は、
「拿捕(だほ)」とパソコンで打つとすぐ出るのだが、
辞書には「(特に、外国・敵国の船を)とらえること」
つまり「とらえる」とか「つかまえる」と言う意味だ。
因みに「拿」を「掌」と間違えている人がいるが、
似て非なるである。
厚く凝り固まった筋肉を、
拇指とその他の四指で「とらえる」「つかまえる」ように、
「握る」と言う説明で通じるだろうか。
この手法は、
この厚く凝り固まった筋肉の「塊」を、
親指とその他の四指で握ったまま、
その「塊」が溶けていくように解けるのを、
それを静かに感じながら待つ、
と言う動きのない時間を維持する。
この、
一見すると動きのない時間の中に、
変化が起こってくる。
初心の施術者には、
この変化が感じられないということもあり、
「静」の時間に耐えられない傾向があるように思う。
これは、
生きていく上でも同じだと思える。
人生には、
必ず「忍耐」の時期がある。
自ら動いても、
思うような結果が得られず、
焦っても、足掻いてもどうにもならない時間だ。
この時期を、
「動く」「焦る」「足掻く」などの「動」で捉えて、
「不安」や「恐怖」を募らせるよりも、
「静」の時期と諦めて、
「休息」「学び」「充電」「遊び」など、
今すぐに成果が見えない事に集中すると言うのは、
哲学だと思う。
施術も同じだ、
凝り固まった筋肉の「塊」も、
元々は「流動性」のある物質なのだ。
流れの止まったものを、
「静」かに、
「動」気のある状態に、
転じさせるのだ。
それは、
『今』
を感じる、
生きると言う事に通じる。
施術時間だったら、
いきなり60分後の「未来」を想像して焦ったり、
数分間費やしても結果の出ない「過去」に焦ったりせずに、
『今』この時に効果のある最善の手法を選ぶのだ。
それには、
『今』に集中し、
「自分だけの力」に、
頼らないと言う事だと思う。
いくらでも『天』と『地』の力が、
いつでも助けをくれているのを感じる、
と言うのもいい結果を出せるようになる、
一つの思考法だと思います。
推拿の施術にからめた、
生き方にも通じる話として記しましたが、
いかがだったでしょうか。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
天と地と人 すいなの信長正義
『天と地と人』では、
推拿施術と推拿の個別指導を行っています。
をご覧ください。
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